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「BL小説」
梅小話(SS)

そんな気がしない……でもない(BL小説)

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イケメン……って部類に入れるとそれだけで色々得をしたりする、らしいけど、俺にはそういうの全然関係ないんだ。

「へぇ~拓(たく)君って私と同じ歳だぁ~」

 あっそ、っていう返答を心の中でもう何度したかわからない。きっと数えていたら十は軽く超えている。
 コンパって何なんだろう。ルームシェアの事で相談に乗ってもらってる先輩に必死に頼まれたから来たけどさ、歳は? 仕事は? ってさ、毎回同じような会話を繰り返して、こんなのちっとも面白くない。趣味は? って聞くくせに、さして自分が興味がない事なら「ふーん」の一言で終わらせるんだ。こんな会のどこに意味があるのか全然理解出来ない。

「拓君っていつも何してんの?」

 プロレス鑑賞、って言ったらどうすんだろう。何となくだけど、プロレスってものに対して偏見がある気がする。今時、赤いパンツ履いたり、顎突きや出してるレスラーなんていないっつうの。
 一度だけプロレス鑑賞って言ったことがあるけど、どことなく残念そうな顔をされて、そっちが訊いてきたくせにって思った。だからそれ以来は適当に映画鑑賞って言っている。流行っていてコマーシャルで流れている情報をそのまましゃべれば皆知ってる知ってると勝手に騒いでくれるし。

「ねぇねぇ、拓君」
「はい」
「この後どっか行かない?」

 行きません。今日は週末で一週間ぶりのプロレス番組の放送日ですから。

「えぇー?! 純也(じゅんや)君って彼女いないのぉ?」

 急にテーブルを挟んだ対角線上が騒がしくなった。先輩の頼みで出席させられた俺はわからないけど、向かいの席にやたらと人気の高い奴が座っている。顔は良い。女受けしそうだし、実際女の子群がってるし。

「純也君もカッコいいけど、私は拓君が超好みだから♪」
「はぁ」

 そうですか。両サイドの女の子が目をキラキラ輝かせてくれるけど、やっぱりコンパはどうしてもつまらなかった。
 向かいの純也って奴のほうをチラッと見ると、意外にそいつも囲まれながら、つまらなそうな顔をしていた。




「はぁ~ダルかった」

 会社で働いて上手くやっていくためには、先輩の頼みを断ることは出来ない。飲み会だって毎回断る事は出来ないし、当たり障りなく溶け込むって事も社会人としては必要な事だ。

「ま、番組には間に合ったからいいけどさ」

 テレビといえど、この試合が実際には終わっていて、結果もスマホで知っていたとしても、全力で応援しないといけないわけで。そのためにはまずシャツにネクタイなんて野暮ったい格好じゃ気合が入らない。好きな選手のTシャツに着替えてテレビの前に正座が基本だ。
 線が細いからいくら小さいサイズを買っても、プロレスラー仕様のTシャツはいつだってダボついてしまう。Sサイズがあればまだいいんだけど、Sはあんまり売られていない。

「! ドロップキックー!」

 試合早々ラッシュの攻撃に少し酔っ払っている俺はテンション高めに応援していた。

 三十分番組なのに観終わるともうなんだか、やりきった感でいっぱいだ。番組終盤に現チャンピオンがにこやかにコンビニで数量限定で発売する弁当とそれに付いているシールを集めて得られる特典を知らせていた。
 コンビニでラッキー♪ それなら今の時間帯でも開いている。ファンとしてはシールを集めないわけにはいかなくて、その格好のままコンビニへとサンダルをつっかけて慌てて向かう。

「やった! あった♪ あった♪」

 さすがプロレスラー考案の弁当ってだけあって、俺ひとりで食うのは難しい量だけどシールは欲しい。明日はこの弁当を一日食べよう。そう決めて二個だけ買って、ついでにプロレス雑誌も買い、心なしかスキップしながら家へと急いだ。

「アタッ!」
「痛っ!」

 酔っ払いでスキップしていて、ガツンと肩がぶつかって、細い俺はそのまま尻餅を付いてしまう。

「す、すみません!」
「あ、いや、こっちこそ、大丈、夫……」
「あ……」

 そこに立っていたのはさっきのコンパにいたイケメンだった。

「……さっきのコンパの」
「え? …………もしかして向かいの席にいた?」

 スーツじゃないからか、一瞬わからなかったらしい。頭のてっぺんからつま先までじっと観察されて、失礼にも指まで指されて、ポカンと口を開けながら純也が俺を眺めている。

「すげ、美味そうな弁当」
「へ?」
「あ、ごめんごめん、腹満杯じゃなくてさ。さっきの店って何か一品の量が値段の割りに少なくなかった? あの金額ならあの三倍は欲しいってくらいでさ。上品なんだか知らないけど、皿の面積に対して料理が……」

 いや、殆ど会話していない奴に、そんな料理と皿の割合を熱く語られても……。

「それより、君、ひとり?」
「あ?」

 だってさ、結構女の子に囲まれてたじゃん。ああいう場合って殆どがお持ち帰りになるケースだ。

「俺、コンパとかって興味ないんだわ。今日のだってタダ飯食えるっていうから行っただけで」

 タダ飯ならそんなに料理と皿の割合にこだわる必要ないじゃん。ケチ臭い男だな。

「つか、あんたも人気あったじゃん。お持ち帰りとかしてないの?」
「俺もコンパって別に……先輩に言われて行っただけで、付き合いだから仕方なしに」
「へー」

 そんな会話をしながら、純也の視線はずっと俺の弁当に注がれている。

「それ七百円オーバーか……高っ」

 これも弁当の容器と飯の割合とか計算してるんだろうか。

「あんた細いのによく食うな」
「こんなに食わないよ。これはシールが欲しくて」
「は?」
「なっ何でもない」

 シールごときが欲しくて弁当を深夜に買うなんて、なんだか子どもっぽい気がして、慌てて口を噤んだ。というより、こいつにそんな素直に全部話す義理はない。そしてずっと尻餅を付いた状態で話していた事を思い出して、すくっと立ち上がると、適当に挨拶をしてその場を走った。
 なんだろう……話しやすかった、気がしないでもない。同じコンパにいただけで、その時は全然話さなかったし、知り合いでもない。でもなんだか話したら、いつも会社で同僚や先輩と話している自分よりも、楽に話せた、気がしたけど。いや、酒のせいかもしれない。




 シールがまだ五枚しか集まらない。っていうか肉の量とかハンパじゃなくて、そう何個も食べられない。出来たら目標は十枚なんだけど、道のりは極めて困難だ。
 時計を見ると一時、先輩が紹介してくれたルームシェアの相手が部屋を見学に来る。プロレスグッズでごった返していたリビングを片付けて、全て自室だけに抑え込んである。
 時間通りにチャイムが鳴って、まずは笑顔で挨拶だ。社会人たるもの笑顔は必需品で、これだけあればそれなりに上手く世渡り出来る。

「はーい」
「こんにちは。澤井先輩に紹介してもらった桜田純也です」
「は……あ!」

 そこにいたのは純也だ。現代社会でめずらしくコンパに興味がなくて、料理と皿の割合にやたらとうるさくて、俺の買ったプロレス弁当に目を奪われていた純也がそこに立っていた。

「え? ルームシェアってあんた?」
「あんたじゃない」
「知ってるよ。拓……だよね?」

 さすがイケメンだ……笑うとその場が華やぐ気がする。そしてどこか心臓がトクンって鳴った気さえする。
 もし、仮にこの純也とルームシェアするならさ、その場合、やっぱり皿に乗せる料理は山盛りのほうが好まれるんだろうか、なんて事を考えていた。

「宜しく」

 口は勝手にそう言って、純也に手を伸ばしていた。

「こちらこそ、宜しく」

 そう笑顔で握り返してきた手にまた心臓がトクンって鳴った……ような気がしないでもない。



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Re: このカップル大好きです。

ムーンで完結した作品のSS 版を読んでくださりありがとうございます!
しかも、全部読んでいたただけて本当に光栄です。これからもムーンに毎日顔を出しますので、是非、宜しくお願い致します。楽しんで頂けたら幸せです。
コメントとても嬉しかったです。ありがとうございました。
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